毒母育ちの私が家族のしがらみを棄てたあと

母に結婚生活を奪われても、文句ひとつ言わず母の面倒を見ることが自分に課せられた生まれてきた意味、と信じ人生すべてあきらめて生きてきました。自分の人生、自分のために生きてよかったのだと気づいてからの日々を綴っています。

デフォーの『ペスト』に学ぶ

コロナウィルスの騒動の中、カミュの『ペスト』が話題になっていた。

天邪鬼の私はあえてデフォーの『ペスト』の方を読んでみました。

デフォーが書いた『ロビンソン・クルーソー』は誰もが知っている作品なのに、作者の名前は案外知られていない気がします。

 

デフォーの『ペスト』は、1665年にペストが蔓延したロンドンの様子を、田舎に避難しないことを選んだ男の目を通して書いています。

 

最初に富裕層がロンドンを逃げ出し地方にペストを広めた。

残った人たちの様子は、今の状態にとても良く似ている。

 

病気を恐れ家に閉じこもる人。

自分だけは大丈夫と夜は街に繰り出し、いつも通りの生活を送り、ある日突然居酒屋でパタリとたおれてしまう人。

冷蔵庫がないから毎日使用人は市場に買いに行き、病気をもらってきて、主人一家も感染する。または使用人の介護を人に任せ、主人一家は地方に逃げ出す。

テムズ川に避難し船上での生活を選択した人。感染しなかった船もあれば全滅した船もあった。

 

誰もが他人のそばに寄らないように警戒する様子。

特効薬と称するものを売りつける詐欺師、終末を叫ぶエセ信仰者。

感染者を看護する人、死体を集めて回るたくましい人たち。

感染者が減り死亡率が下がると地方に逃げていた人たちが戻ってきて、警戒心を薄めた人たちが感染者と接し、せっかく逃げ延びていたのに収束間際に感染し一家全滅した話。

 

主人公の目を通し、ロンドンの様子が克明に描かれている。

 

デフォーはこの時5歳で、自身の体験でないことは確かだ。当時を生き抜いた人々への聞き取りや記録を相当調べて書いたことがうかがえる。だからまるで実際にあったことのような臨場感がある。途中にロンドン週報というおそらく新聞のようなものに掲載された死亡者数、感染者数があり、リアル感を増している。

 

興味深かったのは、デフォーの『ペスト』には、鼠の「ね」の字もないことだ。

あくまでロンドンの人々がどのように行動したか、噂話と主人公が見たことだけを淡々と描かれている。

 

小説ではあるが実際にあったと思えることばかりで、人は300年経っても変わらないことがよくわかる。

 

きっとこの後、コロナウィルスの収束の兆しが見えはじめ、緊張感と警戒心が緩んだ時にまた、感染者が増えるのかもしれない。

今起こっていることの振り返り、これから起こることの予言書としても読めました。

自宅で暇な時間を過ごす中、今の状況を克明に記録しておけば、300年後には立派な歴史史料になるかもしれませんね。