科学の進歩によりヒトとほんの少し違うDNAを持つ人が発見され妖人と名付けられた、という設定でその妖人の事件を扱うシリーズ。ラノベで人気の作者さんですが、角川ホラー文庫から出ています。
初頭の言葉がこの物語の核を語っています。
「かつて私はあなたの一部だった。小さな小さなたまごとして、あなたの中に存在していた。私は完全にあなたに依存しており、私とあなたは分かちがたいものだった。(中略)
けれど、その奇跡がどうしようもない絶望に感じられてしまうのだ。」
娘と同居する母親は、父親が早くに死んで足が不自由。娘に対し、自分を優先するのを当たり前だと思っている。
もう一人の娘の親は、厳しいしつけを娘のためと信じ言葉で攻撃するタイプ。
「あなたのため」「あなたは私の娘」という魔女の呪文で娘をしばる。
ここでタイトルの魔女が毒親であることがはっきりする一文が来る。
「母親というのはたくさんの呪文を持った魔女なのだ」
こんな風に追い詰められた二人が出会うことで起きた出来事が語られていくわけで。
母親に支配されていると感じ、苦しんでいても何もできない娘の言葉に思い当たることが多すぎて心に刺さりました。
特に娘と同居している母親のずうずうしさ。娘の彼氏に勝手に会い、結婚して娘が死んだあと私の面倒を見てくれるのかと聞くのを当然と思っている。娘は当然のこと彼氏に別れを告げられるわけで。娘が娘自身を犠牲にしてでも自分の面倒をみることを当然と考えている女性をよく表していました。
二人を裏で操る主人公の義弟の母親との関係とかが挿入されていて、成長を止めるために食事をさせないとか、包帯で体をしばるとか、自分と同一視するとか。
母親の、子に対する執着心のおぞましさを強調しているように感じました。
この本は探偵小説ではないので、事件自体はあらましがすぐわかるように書かれているのですが、毒親に追い詰められた娘の選択としてあってもおかしくないことだと思いました。
この本の参考文献が『母は娘の人生を支配する』1冊だというのが不思議なくらい、娘が親を毒親と感じるツボを押さえているなあ、と思う本でした。